【読書】<先取り志向>の組織心理学プロアクティブ行動と組織

今回はガッツリ情報をまとめてフローするだけの記事ですが。

 

<概要>
現在の社会環境は変化が大きくなっている。そんな中組織としても不確実の中で未来を先取りして自発的に行動する「プロアクティブな組織」でないと生き残るのが難しくなっている。
プロアクティブな組織としての条件は、①先取り性②能動性③関係者の巻き込み と言えるだろう。

 

プロアクティブ組織に必要なもの>
今の社会のように未経験な課題が多く発生する中では組織は成長することが求められている。その条件は3つで①適切な経営戦略②明確な課題設定と適切な対処③不明瞭な状態での適切な情報収集、判断、意思決定 である。

①経営戦略…以下の要素が強く関わっている。
・製品やサービスの種類と量←組織規模や構造が規定される
イノベーションの必要度←新しい成果やプロセスを出す必要性が異なる
多角化度合い←組織の様態が変わる
・地理的な多様性←実際的なシナジーを生み出すために考慮すべき条件である

②課題設定と適切な対処…課題遂行に関係する内部の調整機能は以下の4要素
「規則」「計画」「階層による調整」「関係者の相互合意」
これらの4要素は課題に対する関係者の相互依存性と課題の不明瞭さによってどの要素が強く現れるか決まる。
規則など左にあるものは課題が明瞭で相互依存性を区分することができているために行えて、右側にあれば不明瞭性が高いときに必要になる。
また、外部の他者を巻き込んで問題に対処することも必要になる。
その上で相互依存性の点でいうと、成員が参加することに意味があったりする。これに関しては情報共有に意味があったりするが、情報に偏りがなかったり課題解決のために話し合われない場合はコミュニケーションは無意味なものとなるため、ただ参加させれば良いということでは無い。

③不明瞭な状態での適切な情報収集や意思決定
人には3つのバイアスがあり、さらに集団に紛れればそのバイアスも強くなる
・考慮する対象、観点を狭めようとする
・将来の展望に対して都合の良い情報収集
・良さそうな選択肢が生まれると広がりを持てなくなること
また、過去の意思決定に対するサンクコストを感じてしまうなど、バイアスを理解して適切な意思決定をできるように論理的な判断をすることが重要である。

プロアクティブ組織に成長するために>
そしてそのように成長して行くためには、チームと個人が成長することが必要である。
個人の成長は人事制度によって行われる。人事制度の目的は評価ではなく育成であるということを人々は忘れがちである。
個人が成長するためには役割を再定義し続けて「他者や組織から求められている役割」「自分の役割を拡張増加させた役割」「自分が持っている役割と異なる領域にも規定した役割」を考えて自分の役割を発展させることが重要である。

また未経験課題に立ち向かう上では動機付けと学習が必要である。新たな課題に対してやる気だけでは解決できない。そのような困難に立ち向かうには「解決したい」という接近欲求と「できないかもしれない」という回避欲求のコンフリクトが起こるが、接近欲求に対しては課題解決の意義づけや、旧課題と新課題の関連付けや、解決方法のイメージを考えることで高め、回避欲求に対しては役割定義などで本人以外に責任があるものだと考えさせたりすることで外的な圧力をかけることで促進される。また責任は俺が取るという安心感を与えることも重要。

組織として目的を共有しながら個人が主体的に活動をして行くことで情報や知識が蓄積し、組織として成長していく。
そこには課題を解決するための学習「シングルループ学習」とその課題解決方法を模索する「ダブルループ学習」そして、良いダブルループ学習を行うための「学習のための学習」が存在する。

学習において日本はOJTにばかり注目している(が理論的枠組みは持っていない)。
OJTのコツは上司が①ストレッチ目標②相談と進捗確認③成長の承認④原因分析と改善⑤率先垂範とビジョン⑥自律の支援 の6つを行うことにあるとされる。
ちなみに初期は③⑤が重要であり、2年以降くらいからは①と④を自発的に考えることが重要になる。

 

<対話を通した学習>
上部の話を聞いて理解した気になるのは良くない。質問をして深いところまで入り込まなければ本質はつかめない。
ダイアログはディスカッションと異なり最適解を出さなくて良い。課題に対する意見を共有し、答えを探す。意味を共有するのがダイアログの場である。

 

<人事評価を使った育成>
人事評価は成果を計測するためではなくて、成長の指標としても用いることができる。(そのためには月に1度などの長いFB期間にしない方が良い。)
未経験課題に対応するためや、グローバル化の影響によって組織は多様な人材が所属するようになっている。
個人を評価するのみでなくて、チームとしての業績や協働を評価するなどすればチームの発展のためにも評価を用いることができる。
自己評価をうまく行うためには、①他者や平均と比較する②自己評価を習慣づける③未来の仕事のために現在を評価していると考える ことによって比較的歪みが少なく意味のある評価を行うことができる。
仕事の質を向上させるためには、考えずに処理をする自動化ばかりを行なってはいけない。考える意識化を行うことで様々な業務に結びつけたりすることのできる思考力を得ることができる。

 

<チーム力の強化>
チームで課題を解決するときの観点としては①課題の必要条件②チームの資源③シナジーという観点から考えることができる
未経験の課題は、チームにとって取り組む課題を変えたり、今までの技術が使い物にならなくなる作用を持つ。しかしそれだけでなくチームとしての自己効力感を失う点も見落とせない悪影響である。

チームの発達は①課題や目的を設定し、②そのための計画や戦略を立て、③その実行をバックアップや連携をしながら行い④今後のために成長していく という形になる。
②③において重要なのが、チームのメンタルモデルを把握した上で柔軟な対応をすることである。
チームメンタルモデルとは、チームにおいて取り組む方針や戦略、お互いのなす役割である。それらを理解するのが②のフェーズに、それを超えながら連携するのが③のフェーズに、それらを刷新して改善するのが④のフェーズで重要である。

チームレベルとそれに必要な要件を解説する。
▽レベル1…既存の課題を効率的に解決できるレベル
・役割や責任が明確である
・メンバーに相互理解が確立している
・チーム志向性が根付いている(チームで結束して行動しようという意思があること)

▽レベル2…変化に柔軟に対応できる
・チームメンタルモデルが共有されている
・相互にモニタリングしている(お互いの状況を主体的に把握している)
・バックアップ/サポートの行動がされている

▽レベル3
・対人交流型記憶システムがある…メタ知識(=誰がどんな知識や専門性を持っているかという知識)を持っていて、議論や対話を通して学びが生まれる状況が構築できていること
・チーム外部の関係者を巻き込んでいること
・高いチーム効力感があること…このチームなら出来る!って感じ。バイタリティとか。

レベル1のチームにはチームビルディングが必要
レベル2のチームには、「クロストレーニング」という自分の役割と異なる役割の理解や実戦を必要とする
レベル3のチームは「チームコーチング」というリーダーがメンバーに組織全体への働きかけを前提にするコーチングと、360度評価を使うのが良い。

 

<組織のコミュニケーションで生じる課題>
コミュニケーションは職務の円滑な履行において重要である。テクノロジーの発展がコミュニケーションに与えた影響を考える。

組織は大きければ大きいほど効率性を悪くする。それは大勢いるからサボって良いやという社会的手抜きと、コミュニケーションの複雑化の2つの理由から生まれる。
テクノロジーはコミュニケーションを変えた。上司の事情などを考えずにどんな時でもメッセージを送れるようになったり、事細かく指示を永続的に残せるようになった。

しかし、テクノロジーによって暗黙知が共有される量が少なくなった。
そしてまた、上司にのみ電子上のコミュニケーションが集まり、対面で話すことを避ける傾向が生まれるようになった。そのため上司は受け取る情報と伝える情報を取捨選択する必要が生まれた。
そしてまた、コミュニケーションは電子上でできるからこそ、自分の業務に集中しコミュニケーションが生まれず、電子で常に仕事が振られていて忙しくなるという状況が生まれてもいる。

今後単純で定型的な業務連絡などのコミュニケーションはコンピュータが代替してくれるかもしれない。しかしコンピュータは処理をになるのみで、指示自体は人間が与えないといけない。コンピュータは究極の指示待ちである。
だからこそ人間は主体性を持ってコンピュータを使うことを求められる。
結局コミュニケーションの起点も人間であり、形式知を共有するための環境は整っているのだから人間には主体性と考えることが求められている。

組織の中でネット上でも繋がりを持つためには、組織における社会的アイデンティティ(役割や階層など)を共有することと、ヒューリスティック(直観的判断)への理解をした上でのナレッジマネジメントが必要である。

情報をうまく用いることができる組織になるために必要なのは、主体的に情報を求め提供する関係が生まれることである。
そのためにはメンバーなどを情報を求めないと課題解決ができない状況などを作って、その価値を実感させるのが良い。

また、それぞれが異なる価値観や情報源を信用して自分の考えを捉えなおさないといけないことに対する理解が必要であると言える。

 

<Leaderを育てよう>
リーダーは、人間性と意思決定能力である。
正真のリーダーシップという考え方では
①情報の分析②信念に沿った行動③状況に応じての感情の開示④ありのままの自分 というのが必要であると考えられている。
また、最近はリーダーの有能性よりも信念/倫理性の方が重要視されているとデータがある。

またリーダーにとって意思決定というのは切り離せない。その問題解決プロセスは
課題特定→情報収集→情報の体系的整理→情報の体系的構築→アイデアの幅出し→アイデアの選択→実現計画の設計→実働管理 というプロセスを踏む。
この問題解決をうまく行うためには①問題認識の斬新さや状況に対する敏感さ②気分をコントロールして考えや計画を行動的にすること③多様な解釈や行動のレパートリーの多さ という柔軟性を持った問題解決を行う必要があると考えられている。

端的に言えば、偏りなく情報収集を行った上で問題の特定を行い、解決策の幅出しと優先順位の設定をして、ブレない信念で選択と実行をすることが重要である。

リーダーは個人の資質のみでなく、フォロワーとの関係性や組織の風土によっても影響される。リーダーが未来を描いた際、フォロワーは動機付けされ活発になることが多い。その際リーダーにも自己効力感が高まり相互に影響を与え合う。
リーダーの成長にフォロワーの影響は欠かせないと考えられる。